坂本九さんが歌ってヒットした歌「幸せなら手をたたこう」が生まれた経緯を長崎市の漫画家の西岡由香さん(59)が描いた「漫画 幸せなら手をたたこう誕生物語」(いのちのことば社)の出版を記念するシンポジウムがあり、作詞した早稲田大名誉教授で元恵泉女学園大学長の木村利人(りひと)さん(90)が参加した。木村さんは「戦争を二度としないよう、平和で愛し合う人間になろうという誓いを込めた」と語った。
シンポジウムは6日、東京都新宿区西早稲田で開かれた。1959年、25歳の大学院生だった木村さんはYMCAの農村復興ワークキャンプに参加しフィリピンに滞在。農村でトイレをつくる労働奉仕をした。戦争で日本軍に父を殺され、日本人を憎んでいたという青年から、ともに汗を流して働いた後で「過去を許そう。二度と戦争を起こさないよう誓い合おう」と言われ、友だちになったという。
滞在先の小学校では子どもたちがスペイン民謡として伝わる歌を、手や足をたたきながら歌っていた。そのメロディーに、木村さんは聖書の言葉をもとに「手をたたこう」「態度で示そう」と歌詞をつけた。帰国後にYMCAの集会で披露したところ、学生の間で全国に広まり、坂本九さんが64年にレコード化してヒット。東京五輪をきっかけに世界にも広まった。
木村さんは「歴史を知り、世界とつながることが大切」と説いた。西岡さんは「木村さんの人柄にほれ込み、歌の力に導かれて漫画を描きました」と述べた。